無観客。
なんて寂しい響きなのでしょうか。
「無観客試合」「無観客ライブ」は成立しても無観客での「コンサート」は存在しません。
何故ならば僕にとっての「コンサート」は歌い手とお客様とが、共に心を合わせて初めて成立する「祭」だと思うからです。

まずはじめにお詫びです。

8月17日、予定通り、午後6時から心を込めての有料生配信ライブを行いますが、名古屋国際会議場センチュリーホールで予定していました『公益財団法人 風に立つライオン基金』主催のチャリティーコンサートは無観客で開催し、お手持ちのチケットは、全て払い戻しさせていただく事に致しました。
これにつきまして、細かなことはできるだけ早く、改めてお知らせ申し上げます。
コンサートを期待して下さる皆様には、この新型コロナ禍に於けるコンサートの延期、中止と、ご迷惑ばかりおかけし、言葉も見つかりませんが、ウィルスの正体もつかめない現状をお酌み取りの上、どうかお許し下さいますよう伏してお詫びとお願いを申し上げます。

本当に申し訳なく、また残念で残念でなりません。
ここに至るまで感染症専門医とも相談し、仲間でも散々議論しました。
何度も何度も悩んでは進み、進んでは悩んできた末に「ここはやろう!」と決めたチャリティーコンサートでした。
僕らは既にコンサートメンバー全員のPCR検査を実施した上で(勿論全員陰性でした)リハーサルを行い、当日が近づいたら更にもう一度PCR検査を行ってから配信ライブに臨むつもりでいます。
一旦収束しかけた5月末には「よし、コンサートやるぞ」と奮い立ったものの、7月に入って東京でも、愛知でもまた全国的に感染者が急増している現状を見ますと、8月17日に不安の中でお客様をお迎えしてコンサートを行うことは、お客様は勿論、スタッフも、メンバーも僕も、心から楽しむことが出来ない、と判断しました。
どうぞどうぞこの思いをお酌み取り頂けますよう。

「無観客」になりますが、生配信ライブはスタッフメンバーともに知恵と力と心を合わせて頑張りますので是非ともご参加下さい!
8月17日午後6時からです。

さて、ここからは愚痴です。

しかしこのようにいつまでもウィルスに怯み、臆していたら永遠にコンサートなど出来ません。

本音を言います。
僕たちはウィルスに臆しているのでありません。
「安全担保」という言葉とその「責任」に怯んでいるのです。

たとえば会場の消毒を徹底し、開場の際にお客様全員の体温を計り、高熱の方にはご遠慮頂いて払い戻しを行い、アルコールによる手指消毒を徹底し、換気にも万全の気を配り、行政のガイドラインに従って観客数を半分以下に減らし、お客様にマスクの着用をお願いし、ソーシャルディスタンスを護ってコンサートを行った、としても無症状感染者の存在は、ご本人を含めて実は誰にも判らないことなのです。

決まり事を励行したから責任を果たした、というわけではないことも理解しています。
お客様がコンサートの帰りにふと立ち寄った飲食店で感染したとしても、心のどこかで「コンサートが」という印象を拭えないでしょう。
ましてやコンサートがクラスターになった、と想像したら悲しいです。

新型コロナウィルスの感染が拡がって以来、どこにも、誰にも悪意が無いにもかかわらず「感染した」というだけでSNS上で残酷でむごい個人攻撃が行われている現状を知っています。
これには心底から怒りを覚えますが、匿名であるという利己的安全がこれ程人を残虐にし、正々堂々と名乗る事も出来ない卑怯卑劣な人が偉そうに汚い言葉を吐き出すのだということも経験上良くわかっています。
ですから万が一SNSごときで攻撃されても気にしないことです。

僕達が恐れているのはそういうことではありません。
僕達が感染の原因になるかも知れず、その向こう側に大切な命があることに思いを馳せ、その責任の重さを痛感しているのです。

これはとても難しい心の戦いです。

様々な災厄や疫病に対してはこれまでのコンサートでも「完全な安全担保」は不可能でしたし、それはこれからも変わりません。
たとえばインフルエンザが猛威を振るった時期でも、その危険性を知りながら、コンサート会場やディナーショーに、沢山のお客様が来てくださいましたし、僕らも罹患を恐れずに舞台に上がってきました。
インフルエンザに対する薬が存在し、ある程度の治療法が確定しているから安心なのですが、ある意味ではその危険性と比べて「コンサートを行う」「コンサートへ行く」という楽しみの方が勝っていたからでしょう。
そして、そのことがお互いの信頼関係をより深めてきたのも事実なのです。

コンサートとはそういうものなのです。

新型コロナウィルスによって、こういった、人と人との繋がりを遮断されるのは悔しいですが、まだまだこの困難は続くでしょう。
勿論、確実に新型コロナウィルスに感染していない人だけがコンサートに集まれば問題はありません。
かといってコンサートに合わせて抗体検査や高額なPCR検査をしてからお出掛けください、というのも現実的ではありません。
これこそお互いの信頼関係でのみ成立する「心の力業」かも知れません。

これはもう哲学の領域なのです。

音楽にそれほどの価値を認めない人には到底理解して頂けないことでしょうが、お客様がほんの僅かでも来て下さるのであれば、近い将来、僕は今実現出来得る、可能な限りの安全を徹底した上で、コンサートを実行しようと思っています。
先程来書いてきたことと一見矛盾するように聞こえるかも知れませんが、これは希望と挑戦の話です。

リスクは不可避だけれども、実際に危険を乗り越え、安全の上に安全を追求しながら、コンサートを実現することが出来ると信じています。
それはお客様との信頼関係の上にしか成り立たないことですが、それ故に、安全なコンサートを安定して実行できたら、世の中が少し変わると思います。

さてしかしその覚悟がとても難しい。
何故難しいかは述べてきたとおりです。

だが覚悟を決めなければならない日は必ず来ると思っています。

ひたひたと迫り来る感染の恐怖におののきながら過ごしておられる方も多いと思います。
どうか呉々も油断せず、ご無事でお過ごし下さいね。
必ず治療薬は出来、必ずこのウィルス禍を乗り越える日は来ます。
だが今日はまだ、こらえて、こらえて。


さて、この続きはまた。